繰延資産とは?会計上と税務上それぞれの取扱いについて解説
2022/12/12
1 繰延資産の意義
繰延資産とは、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶ一定のものをいいます。すでに代金の支払が完了している点では前払費用と共通していますが、繰延資産は役務の提供を既に受けている点で前払費用と相違しています。
法人税法上の繰延資産は、会計上の繰延資産と税法独自の繰延資産があり、それぞれ取扱いが異なります。
2 会計上の繰延資産
【範囲】
繰延資産の項目は、原則として下記の5つが限定列挙されています。
⑴ 株式交付費
新株の発行又は自己株式の処分に係る費用で、株式募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、その他株式の交付等のために直接支出した費用
⑵ 社債発行費
社債募集のための広告費、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、社債の登記の登録免許税その他社債発行のために直接支出した費用
⑶ 創立費
定款及び諸規則作成のための費用、証券会社の取扱手数料並びに設立登記の登録免許税等の費
⑷ 開業費
土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、保険料等で会社設立後営業開始日までに支出した開業準備のための費用
⑸ 開発費
新たな技術もしくは新たな経営組織の採用、資源の開発、市場の開拓のために特別に支出する費用
※ただし、特別に支出したものに限られ、経常的に支出するものは資産計上できません
3 税法上の繰延資産
【範囲】
会計上の繰延資産(上記⑴~⑸)に加え、税法独自の繰延資産として下記⑹~⑽が定められています。
⑹ 自己が便益を受ける公共的施設又は共同的施設の設置又は改良のために支出する費用
(例) 道路舗装のための負担金、同業者団体の会館建設負担金、商店街のアーケード・日よけ等の設置費用
⑺ 資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ちのき料その他の費用
(例) 建物を賃借する際の権利金・立ちのき料等、電子計算機を賃借する際の引取運賃、据付費等
⑻ 役務の提供を受けるために支出する権利金その他の費用
(例) ノウハウの設定契約に係る頭金
⑼ 製品等の広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用
(例) 看板、ネオンサイン、陳列棚等の贈与費用
⑽ ⑹~⑼のほか、自己が便益を受けるために支出する費用
(例) 同業者団体の加入金、出版権の設定の対価
4 償却方法
会計上の繰延資産と税法独自の繰延資産では、償却限度額の計算方法が異なり、会計上の繰延資産は「任意償却」、税法上の繰延資産は「均等償却」で計算することとされています。
任意償却とは、その言葉通り、好きな時に好きなだけ償却することができるため、会計上の繰延資産は帳簿価額を限度として損金に算入する金額を決めることができます。
黒字の時は一括償却し、費用を大きくして節税する、赤字の時は償却費を取らないことも可能となります。
一方、税法上の繰延資産は、その支出の効果の及ぶ期間で均等に償却しなければなりません。
上記支出の効果の及ぶ期間については、次のように定められています。
5 少額繰延資産の取扱い
均等償却を行う税法上の繰延資産について、その支出額が20万円未満のものは、支出事業年度の損金経理をすることで全額損金算入することができます。この場合の支出金額が20万円未満であるかどうかの判定は、次の基準で判定します。
① 公共的施設又は共同的施設の設置等のために支出する費用
一の設置計画又は改良計画につき支出する金額
② 資産の賃借又は役務の提供を受けるための権利金等
契約ごとに支出する金額
③ 広告宣伝用資産の贈与費用
対象資産の1個又は1組ごとに支出する金額
6 まとめ
以上、会計上の繰延資産と税法上の繰延資産について説明しました。会計上の繰延資産は任意償却により節税対策が可能となります。税法上の繰延資産では、このような運用はできないため、上手く活用して節税に取り組みましょう。
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