インボイス制度の令和5年度税制改正事項(2割特例)
2023/02/27
令和5年度税制改正大綱が令和4年12月16日に自由民主党・公明党から「令和5年度税制改正大綱」が公表されましたが、インボイス制度に関して実務において大きな影響を受けると予想される「2割特例」についてポイントをまとめました。
1⃣ 令和5年度税制改正大綱の基本的考え方等
⑴ インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減
これまで免税事業者であった者がインボイス発行事業者になった場合の納税額を売上の消費税額の2割に軽減する3年間の負担軽減措置(2割特例)を講ずることにより、納税額の激変緩和を図るとのことです。この措置により、簡易課税制度の適用を受ける場合に比べ、さらに事務負担が軽減されることが予想されます。今回はこの「2割特例」について掘り下げて解説させていただきます。
⑵ 事業者の事務負担の軽減
インボイス制度の定着までの実務に配慮し、一定規模以下の事業者の行う少額の取引につき、帳簿のみで仕入税額控除を可能とする6年間の事務負担軽減策(少額特例)を講ずることとされます。加えて振込手数料相当額を値引きして処理する場合等の事務負担を軽減する観点から、少額の返還インボイスについては交付義務を免除されます。この部分については後日解説する予定です。
2⃣ 小規模事業者に係る税額控除に関する経過措置(「2割特例」)
⑴ 対象期間
大綱では「対象期間は適格請求書発行事業者の令和5年10月1日から令和8年9月30日までの日の属する課税期間において~」とあります。すなわち、個人事業者が令和5年10月1日に登録した場合、令和5年10月~12月の申告から令和8年分までの申告が対象となります。
⑵ 対象者
インボイスの登録をしなければ課税事業者にならなかった者が対象となります。消費税法の規定により事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる事業者は対象外となります。
【事業者免税点制度】
① 基準期間・特例期間
・基準期間における課税売上高が1千万円を超える場合(消法9①)
・特定期間における課税売上高による納税義務の免除の特例(消法9の2①)
➁ 承継・分割
・相続・合併・分割があった場合の納税義務の免除の特例(消法10、11、12)
・新設法人の納税義務の免除の特例(消法12の2①)
・特定新規設立法人の納税義務の免除の特例(消法12の3①)
③ 3年縛り
課税事業者選択届出書を提出して2年以内に本則課税で調整対象固定資産の仕入れ等を行った場合の3年間(消法9⑦)
(注)「2割特例」は課税期間の特例の適用を受ける課税期間及び令和5年10月1日前から課税事業者選択届出書の提出により引き続き事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる同日の属する課税期間については、適用されないため注意が必要です。
また課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年10月1日の属する課税期間から事業者免税点制度の適用を受けられないこととなる適格請求書発行事業者が、当該課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出したときは、当該課税期間からその課税事業者選択届出書は効力を失うこととなるため、この規定はセットで覚えておくといいかもしれません。
⑶ 税額の計算方法
2割特例はみなし仕入率80%の簡易課税制度と同じ計算方法となります。
第5種事業にあたるサービス業の場合で考えてみましょう。
(例)
・収入 5500万円(10%税込)
・費用 1100万円(10%税込)
この場合求められる税額は以下となります。
・原則課税 400万円
・簡易課税 250万円
・2割特例 100万円(500万円−500万円×80%)
⑷ 適用にあたっての手続き
適格請求書発行事業者が「2割特例」の適用を受けようとする場合には、確定申告書にその旨を付記することが必要とされています。付記すればいいだけなので事前の届出は不要となります。また申告時に簡易課税又は本則課税の選択適用が可能であったり、2年間の継続適用の縛りがなかったりと納税額の激変緩和・事務負担軽減に配慮した制度となっています。
⑸ 簡易課税制度の移行措置
「2割特例」の適用を受けた適格請求書発行事業者が、当該適用を受けた課税期間の翌課税期間中に、簡易課税制度の適用を受ける旨の届出書を納税地の所轄税務署長に提出したときは、その提出した日の属する課税期間から簡易課税制度の適用が認められます。これに対し原則的な取扱いは、簡易課税制度の適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに選択届出書を提出します。つまり、事前提出が必要ということであり、ここでも納税者に配慮した制度となっているといえます。
3⃣ まとめ
今回は2割特例についてまとめました。インボイス制度については制度が始まってみて初めて気づく点などがあるかと思います。令和5年度税制改正事項に関しては財務省から1月20日に公表されている「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」に制度内容の詳細が載っているので参照してみるといいかもしれません。
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