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インボイス制度の令和5年度税制改正事項 返還インボイスの交付義務

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インボイス制度の令和5年度税制改正事項
返還インボイスの交付義務

インボイス制度の令和5年度税制改正事項 返還インボイスの交付義務

2023/04/17

令和5年度改正では、インボイス制度について事業者の負担軽減の観点から主に4点の重要な改正が行われました。改正事項のうち1万円未満の値引き等は返還インボイスの交付義務がない点について解説します。

1 改正内容

 ⑴ 売手負担の振込手数料相当額に係る返還インボイスの交付について

売上に係る対価の返還等の税込価額が1万円未満の場合、返還インボイスの交付義務を免除する措置が導入されます。この措置は全ての事業者が対象です。買手が取引対価を振り込む際に一部対価を差し引いて売手に入金した場合、売手の方で値引きの処理をされるケースがありますが、そうした場合に返還インボイスの交付を不要としたものです。

銀行の振込手数料のほか、小売業における商品の返品でも返還インボイスの交付義務が免除されます。毎月継続的に取引があるような場合、返品伝票や販売奨励金の書類を交付して値引き処理をしていることもあると思います。ただし、値引きが1万円を超える場合には返還インボイスの交付対応が必要となります。

⑵ 注意点

一方で、事前に合意がないにもかかわらず無断で買手が振込手数料相当額を差し引くことは、下請法に反する行為になり得るので留意が必要です。

売手は「当社の会計処理の都合上、振込手数料は振込時に貴社(買手)でご負担ください」などと書面等にて先方に通知し、その上で買手により振込手数料相当額が差し引かれていれば、返還インボイスの交付義務免除により対応するという形が取引の流れとしては自然な流れになるかと思います。

2 実務上の留意点

⑴ 売上値引として処理している場合

振込手数料相当額を売上値引として処理している場合には、特段注意する必要はありません。今回の改正で1万円未満の値引き等は返還インボイスの交付義務がなくなりました。よって、通常通りの会計処理をすれば問題ありません。ただし、値引き額が1万円を超える場合についてはこの限りではありません。

⑵ 支払手数料等として処理している場合

振込手数料相当額を支払手数料として処理している場合は注意が必要です。支払手数料として会計処理をしている場合は、1万円未満の値引き等の返還インボイスの交付義務免除の対象とならないため、原則として買手が金融機関から受け取った振込手数料に係るインボイスと、買手に振込手数料を立替払いしてもらったことを証する書類として立替金精算書等を合わせて保存しなければ仕入税額控除を適用することはできません。(一定の場合を除く「国税庁:インボイス制度Q&A 問84」)

しかし、「財務省:インボイス制度の負担軽減措置のよくある質問とその回答 問18」より、会計上は支払手数料として費用の勘定科目で処理をしながら、消費税法上の課税区分は売上に係る対価の返還とする処理も認められることが示されました。消費税法上の処理と会計処理とを必ずしも合わせる必要はなく、消費税法上、売上値引として処理すれば現行通り一定の事項の帳簿記載のみで対応できるということです。

実務上において、従来支払手数料として処理している場合、財務諸表の比較可能性の確保等においても勘定科目は支払手数料で処理します。消費税法上において、売上に係る対価の返還と処理する方法を採用することが多いと予想されます。

⑶ システム対応

システム対応に関しても注意が必要になります。支払手数料として入力した時点で自動的に仕訳されるシステムを使用している場合、新たなシステム改修が必要になる可能性があり、消費税申告の際には振込手数料相当額に係る支払手数料については売上に係る対価の返還として処理しているかの精査が必要になる可能性があります。

⑷ 少額特例との関係

令和5年度改正において、基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間の課税売上高が5千万円以下の事業者については、6年間に限り、1万円未満の課税仕入れに係るインボイスの保存を不要とする措置が設けられました。対象者においては、振込手数料相当額についてインボイスの保存がなくとも仕入税額控除が可能になるため、6年間は勘定科目と消費税法上の処理の差異についての心配は不要となります。

3 まとめ

今回は1万円未満の値引き等の返還インボイスの交付義務についてまとめました。この論点については実務家の間でもインボイス制度の概要が公表されてから課題に挙がっていた部分かと思います。それが今回の改正で緩和されました。令和5年度税制改正事項に関しては財務省から1月20日に公表されている「インボイス制度の負担軽減措置(案)のよくある質問とその回答」に制度内容の詳細が載っているので参照してみるといいかもしれません。

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