企業で取り組むＳＤＧｓ　～カーボンクレジットの活用とその経理処理～

持続可能な１７の開発目標（ＳＤＧｓ）が２０１５年に国連で採択されました。

近年では企業にもＳＤＧｓへの取り組みが評価されるようになり、企業はその取り組みを企業価値向上につなげることができます。貧困、紛争、気候変動、感染症、これらの課題を解決する１７の開発目標の中で、企業として取り組むものとして、今回は気候変動に対する取り組みを紹介します。

気候変動に対する企業の取り組みの中で、具体的には、二酸化炭素の排出削減、吸収増加に対する取り組みを紹介します。

企業として二酸化炭素の削減に取り組む場合、例えば自社が大規模な工場を所有していて、その工場で排出する二酸化炭素を削減するために機械設備を最新のものに更新するとか、

山に植林をして森林による二酸化炭素の吸収量を増やすとか、そういう取組が考えられると思います。ただしそのような二酸化炭素の削減への大がかりな取り組みは、全ての企業が出来るものではありません。

そこで、二酸化炭素の削減への取組みに直接かかわれないと思われる企業においても、クレジットを購入することでその取組みに参加することが出来る制度、それがカーボンクレジットの制度です。

二酸化炭素の排出削減、吸収増加に対する取り組みには多額の資金が必要となる場合があります。

カーボンクレジット制度とは、省エネルギー機器の導入や森林経営などの取り組みによる二酸化炭素などの温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として国などの認証機関が認証する制度です。

クレジットの創出者は、認証されたクレジットを売却することにより売却益を得、この売却益を設備投資などに利用し更なる省エネ投資などに活用することができます。

一方、クレジットの購入者はクレジットを購入することで、クレジットの創設者が実施する二酸化炭素削減の取り組みに参加したことになります。

ここではカーボンクレジットを購入した中小企業のメリットについて紹介します。

 

▮ カーボンクレジットを購入した会社は購入の事実を企業価値として主張することが出来ます。

例えば「当社は二酸化炭素削減プロジェクトのカーボンクレジットを取得し、地球温暖化防止に貢献しています」などのＰＲをすることで企業価値が高まります。

 

▮ カーボンクレジットの取得を通じてビジネス機会の獲得や新たなビジネスネットワークの構築に繋がります。

 

▮ そしてなによりカーボンクレジットを購入することによって、貴社が、地球環境変動対策への参加が出来るということが最大のメリットとなります。

１.クレジット代金の支払時

　クレジット代金の支払時には（前渡金）で処理します。

　　借方（前渡金）×××　／　貸方（現金預金）×××

 

２.クレジット登録簿への登録時

　クレジット登録簿に登録されたときにクレジットを取得したことになります。

　クレジットは無効化されるまでは無形固定資産で経理します。

　　借方（無形固定資産）×××　／　貸方（前渡金）×××

 

３.無効化した場合

「カーボンクレジットの無効化」とは、クレジット登録簿の無効化口座に名義を移転し、再販売、再使用が出来ないようにすることを言います。　無効化は別の用語で「カーボンクレジットの使用」「カーボンオフセット」などと言う場合もあります。　無効化はクレジット管理者の事務局に申請して行います。

カーボンクレジットを無効化（使用）することで、無効化（使用）したクレジット量に応じた二酸化炭素量が世の中から削減されたということになります。　カーボンクレジットを無効化することで、出資した金額が費用に計上できます。

　　借方（広告宣伝費）×××　／　貸方（無形固定資産）×××

法人税法上も、カーボンクレジットを無効化した日を含む事業年度において、原則として、当該クレジット価額に相当する金額を損金の額に算入します。

いかがでしょうか。ＳＤＧｓは世界的な取り組みとして行っていくことが必要ですが、一企業ごとの力には限りがあります。みんなで力を合わせて二酸化炭素削減に取り組むカーボンクレジットの仕組みを利用してみてはいかがですか？地球環境変動対策に貢献しながら企業価値も高めることができて一石二鳥ですね。