相続税申告における配偶者の税額軽減と二次相続について
2023/05/22
相続税の申告において、配偶者が財産を相続した場合、その配偶者の相続税額については税額軽減を受けられる有利な規定があります。その計算方法と、二次相続についてどのような影響があるのか説明をしていきます。
目次
1. 相続税申告における配偶者の税額軽減
相続税の申告において、配偶者が取得した相続分については税額の軽減を受けられる「配偶者の税額軽減」という特例があります。被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際に取得した正味の財産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
(1)1億6000万円
(2)配偶者の法定相続分相当額
配偶者が取得した財産が1億6000万円以下である場合、配偶者について計算された相続税額は100%軽減となり0円、1億6000万円以上であった場合でも、法定相続分相当額と1憶6000万円のいずれか多い金額までは税額軽減の対象となります。
2. 特例を受けるための要件・手続き
要件・手続きはシンプルで以下の通りです。
① 遺産分割が確定していること
② 原則、期限内に相続税の申告書を提出すること
税額軽減の明細を記載した相続税の申告書に、戸籍謄本等のほか遺言書の写しや遺産割協議書の写しなど、配偶者の取得した財産が分かる書類を添えて提出することが必要となります。
この配偶者の税額軽減は、配偶者が遺産分割などで実際に取得した財産を基に計算されることになっています。したがって、相続税の申告期限までに分割されていない財産は税額軽減の対象になりません。ただし、相続税の申告書または更正の請求書に“申告期限後3年以内の分割見込書”を添付した上で、申告期限後から3年以内に分割したときは税額軽減の対象になります。なお、相続税の申告期限から3年を経過する日までに分割できないやむを得ない事情があり、税務署長の承認を受けた場合で、その事情がなくなった日の翌日から4カ月以内に分割されたときも、税額軽減の対象になります。
3. 軽減額の計算事例
遺産総額2億円、相続人を配偶者と子2名とした場合で計算してみます。
遺産総額2憶円 - 基礎控除4800万円 = 課税遺産総額 1億5200万円
課税遺産総額 1億5200万円 × 法定相続分 × 各人の相続税率 - 控除額
【相続税額】
配偶者 1憶5200万円 × 1 / 2 × 30% - 700万円 = 1580万円
子 A 1憶5200万円 × 1 / 4 × 20% - 200万円 = 560万円
子 B 1憶5200万円 × 1 / 4 × 20% - 200万円 = 560万円
合計相続税額(軽減前) 2700万円
① 配偶者が遺産総額の全てを相続した場合
軽減額 2700万円 × 1憶6000万円 / 2憶円 = 2160万円
納付税額 2700万円 - 2160万円 = 540万円
配偶者 540万円
② 配偶者が遺産総額の1/2を相続した場合
軽減額 2700万円 × 1 / 2 = 1350万円
納付税額 2700万円 - 1350万円 = 1350万円
配偶者 0円
子2名分 1350万円
③ 配偶者が遺産総額の1/3を相続した場合
軽減額 2700万円 × 1 / 3 = 900万円
納付税額 2700万円 - 900万円 = 1800万円
配偶者 0円
子2名分 1800万円
4. 二次相続への影響
上記のように、配偶者が財産を取得する場合には相続税額の計算において大きな軽減をうけることができます。しかしながら、配偶者が財産を取得したということは、配偶者に相続が発生した場合、配偶者の相続においても税務申告が必要になるケースがあります。この配偶者自身の相続については、相続人の人数も1名少なくなり配偶者の軽減はもちろん受けることができません。一次相続と同じように考えていると思わぬ高額な相続税額となることも考えられます。二次相続も踏まえた遺産分割を行うことが、トータルの節税につながります。
配偶者固有の財産が2000万円あった場合、上記①~③のケースで計算すると以下のようになります。
⑴ 配偶者の遺産総額 2000万円 + ① 取得分 = 2億2000万円
2億2000万円 - 基礎控除 4200万円
二次相続税額(子2名分) 3940万円
一次・二次合計税額 4480万円
⑵ 配偶者の遺産総額 2000万円 + ② 取得分 = 1億2000万円
1億2000万円 - 基礎控除 4200万円
二次相続税額(子2名分) 1160万円
一次・二次合計税額 2510万円
⑶ 配偶者の遺産総額 2000万円 + ③ 取得分 = 8666万円
8666万円 - 基礎控除 4200万円
二次相続税額(子2名分) 570万円
一次・二次合計税額 2370万円
上記の試算結果から、一次相続で一番多く税額を支払った③がトータルの納税額では一番少なくなります。①との差額は2110万となり、配偶者の取得割合を検討し調整するだけでもこれだけの節税となります。
5. 税務会計のことで困ったら
本記事では相続税申告における配偶者の税額軽減と二次相続について説明してきました。一次相続における配偶者の取得割合をよく検討するだけでも、二次相続も含めた税額について大きな節税ができることがあります。相続税申告・相続税の試算等でなにかお困りごとがございましたら掛川総合会計事務所のスタッフが専門的な立場からアドバイスさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
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