養子縁組による相続税の節税効果について
2023/07/18
養子縁組が相続税対策になるという話を聞いたことがあるかも知れません。養子縁組によって実際どの程度の節税効果があるのか、本記事では養子縁組による相続税の節税効果を事例に当てはめて計算をして説明していきます。
目次
相続税の申告において、養子も実子と同じ扱いとなり法定相続人の1人として計算されます。相続人が「配偶者、長男、次男」の3名である場合の基礎控除額は以下の通りです。
3,000万円 +(600万円 × 3名) = 4,800万円
上記の式に養子が1名追加されると、法定相続人が増えることになり基礎控除額が600万円増加し、その分税負担は軽減されます。
但し、養子をどんどん増やせば無制限に基礎控除額が増えていくというものではなく、基礎控除額の計算上では、実子がいる場合は養子1名、実子がいない場合は養子2名までしか法定相続人として計算できません。
それでは例を用いて説明していきます。
遺産総額2億円、相続人を配偶者と子2名とした場合で計算をします。
遺産総額2億円 - 基礎控除4,800万円 = 課税遺産総額 1億5200万円
法定相続分で相続した場合、本来の合計相続税額は1,350万円となります。
これに対し、養子縁組をした場合
遺産総額2億円 - 基礎控除5,400万円 = 課税遺産総額 1億4,600万円
法定相続分で相続した場合、相続税額は1,215万円となり、差引135万円の節税となりました。基礎控除額が増えたこと、及び相続人数の数が増加したことにより法定相続分が分散され税率が下がったことが影響しています。
本来、被相続人から孫に財産を相続させるためには、親から子、子から孫と2段階の相続を経ることになります。しかし、孫を養子にすることで一世代スキップして財産を相続させることができ、本来二世代で2回納付する相続税を一世代で1回の納付で済ますことができます。不動産登記費用等の負担も同様に1回で済みます。相続を一世代スキップすることができる影響は子の相続の際に大きな節税になることがあります。
但し、孫が養子となって被相続人(父)から相続を受ける場合、孫の相続税額に2割を加算するという制度があります。
遺産総額2億円、相続人を配偶者と子2名とした場合、父、子、孫の3代として計算すると、子の固有資産が1億円あった場合、父の相続後のAの遺産総額(法定相続分で父の遺産を取得した場合)子の遺産額は以下の計算になります。
1億円 +(2億円 × 法定相続分1/4)= 1億5000万円
子の相続人が配偶者とその子の2名であった場合、
遺産総額1億5000万円 - 基礎控除4200万円 = 課税遺産総額 1億800万円
法定相続分で相続した場合、相続税額は920万円となります。
これに対し、父の相続の際に孫を養子とした養子縁組していた場合、子Aの遺産総額は以下の通りです。
1億円 +(2億円 × 法定相続分1/6) = 遺産総額1億3,333万円
遺産総額1億3,333万円 - 基礎控除4,200万円 = 課税遺産総額 9,133万円
法定相続分で相続した場合、相続税額は713万円となり、差引207万円の節税となりました。基礎控除の節税分と合わせると、383万円も節税ができます。
養子縁組は、相続直前でも当事者のみで行うことができ、比較的簡単にできる節税対策となる場合がありますが、リスクも検討しておかなければトラブルの元となります。
・相続人が増えることで遺産分割の際に争いの原因となることがあります。
例えば、本来の相続人からしたら、自分の法定相続分が減ってしまうことや、長男の子を養子にしたら、ほかの兄弟姉妹の子と不公平が生じ争いの原因となることがある。
・名字が変わってしまうことがある
・養子をとることで逆に相続人が減ってしまうケースもある。
養子縁組することで相続人が減る場合があるので注意が必要です。
例えば、被相続人に実子がおらず、相続人が配偶者と父母のみの場合、法定相続人は配偶者、父、母の3人となります。
ところが、この状況下で養子縁組することで、養子は第1順位の相続人となるため、第2順位の相続人である父母は相続人とはならないことになります。
その結果、相続人は配偶者と養子の2人のみとなり、養子をとったことにより相続人の人数が3人から2人に減少してしまう場合があります。
この点は十分に注意が必要です。
本記事では相続税申告における養子縁組について説明してきました。養子縁組により節税は確かに可能かもしれませんが、相続関係が複雑化し争いの元となることもあります。養子縁組を検討する際、相続税申告・相続税の試算等でなにかお困りごとがございましたら掛川総合会計事務所のスタッフが専門的な立場からアドバイスさせていただきます。是非お気軽にご相談ください。
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