資格取得の費用は経費にできる?できない?
2023/11/13
会社の従業員などが仕事に必要な資格を取得する際、その費用はどのように処理すればよいのでしょうか?「仕事に必要であるから経費にできる」と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、必ずしもそうとは言えない場合があります。今回は資格取得の費用の処理の仕方と考え方について説明していきます。
目次
1.経費に含めることができるのか
原則、業務に関係のある資格であれば経費にすることは可能です。
国税庁では、技術や知識の習得費用は、次の3つのいずれかの要件を満たしており、その費用が適正な金額であれば、給与として課税せず経費にできると述べています。
⑴ 会社などの仕事に直接必要な技術や知識を役員や使用人に習得させるための費用であること
⑵ 会社などの仕事に直接必要な免許や資格を役員や使用人に習得させるための研修会や講習会などの
出席費用であること。
⑶ 会社などの仕事に直接必要な分野の講義を役員や使用人に大学などで受けさせるための
費用であること。
要約すると、 業務に直接必要な資格の取得であること
研修等の費用が高額すぎないこと
以上を満たすことが原則的な考えとなります。
工場で働くための「危険物取扱者」や経理の社員が「簿記資格」の取得費用を会社が負担した場合は経費にしても問題ありません。
2.経費にできない場合
先ほどは、直接的に必要な場合であれば原則、経費にできると述べてきましたが、経費にできない場合もあるので説明していきます。
医師や弁護士、税理士といった資格は、資格の保有者だけが行える独占業務があり、就職・転職・開業にあたり資格を取得した個人のメリットが大きいと言えます。そのため、個人事業主か会社かを問わずに取得費を経費にすることはできません。
開業医が医師免許の取得にかかった学費を経費にすることも認められていません。その資格によって得られる地位や職業がある場合には、資格取得の費用は経費となりません。また、そのような資格においては資格の取得費用が高額になる場合も多く、上で説明した経費にできる場合の要件としても外れてしまいます。
3.資格取得の費用が給与扱いになるケース
会社の経理担当者が税理士の資格を取得し、その費用を会社が負担した場合はどのように処理するべきでしょうか?今まで説明してきたように、税理士の資格は経理の業務に関して必須ではありませんし、個人へのメリットが大きいと考えられます。そのため経費として処理はできません。そのような業務に直接関係がなく、税理士のような一身専属の資格取得の費用を負担する場合は、原則従業員への「給与」となります。
「給与」として扱う事で会社からすれば、給与として経費にできますが、従業員側から見るとその分の所得税や社会保険料などの負担も増えるためよく思われないかもしれません。
4.勘定科目
資格取得費用の勘定科目の例としては以下のようなものが挙げられます。
研修費:セミナー代等
福利厚生費:業務に必要な資格を取得する際の費用
新聞図書費:書籍の購入代金
旅費交通費:試験会場への交通費
特に決まりがあるわけではありませんが、社内で使用する勘定科目が異ならないようにあらかじめ決まりを作っておくことも必要です。
5.資格取得の費用を経費にすることのリスク
資格取得の費用を会社で負担することのリスクもあります。従業員が資格をとってその費用を負担してもその従業員が退職されてしまう場合が考えられます。退職した従業員に対して、費用の返還を求めることはできません。
※労働基準法第16条「使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」に抵触するためです。
6.まとめ
資格取得の費用は要件を満たすかどうかによって経費になるか、給与扱いになるかが変わってきます。
・業務上必要であること
・業務に直接必要な技術や知識の習得であること
・費用として高額すぎないこと
※ 全社員が対象となるよう会社内で決まりを作る必要があります。
再度確認しますと、以上3つの要件を満たすことで経費として認められます。
会社によって必要な資格や研修というのは内容が変わってきます。そのため、業務に必要な資格であるかの判断は難しくなってくると思います。会社負担の経費とする場合、業務内で必要である理由を説明できるように、資料の保管をしておくことが必要です。領収書だけでなく「セミナーのパンフレット」や「資格の合格証明書」なども一緒に保管しておくとよいでしょう。また、給与とする場合も基準を就業規則や給与規定などで明確にしておく必要があります。
会社の成長、従業員のモチベーションなどのためにも、会社が資格取得の費用を負担することは一つの手段となります。自身の会社の業務に必要な資格であるかなどの要件を確認しつつ、社内でルールを設けて会社全体で成長できるシステムを作ることがよいでしょう。
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