同族会社について
2022/09/20
同族会社について
同族会社とは、特定の支配株主によって経営権が握られている会社のことです。法人税法上は、特定の関係にある個人あるいは法人が一定数以上の株式を保有していたり、出資を行っていたりする場合に、その会社は同族会社とみなされます。組織の中心的な一族によって独占的に支配されやすいため、税制上の特別な措置が設けられているのが特徴です。
1. 同族会社とは
⑴ 同族会社
会社の株主等 (その会社が自己株式を有する場合のその会社を除く) の3人以下、並びにこれらと「特殊の関係のある個人及び法人」が株式等の50%超を保有している場合のその会社をいいます。経営者一族が会社の株式等の全部あるいはほとんどを保有している状態であり、いわゆるファミリービジネスのことです。
⑵ 特定同族会社
会社の株主等 (その会社が自己株式を有する場合のその会社を除く) の1人、並びにこれと「特殊の関係のある個人及び法人」が株式等の50%超を保有している場合のその会社を被支配会社といいます。特定同族会社とは、その被支配会社のうち、被支配会社ではない法人を株主から除外して判定しても、被支配会社になる(資本金の額が1億円以下であるものにあっては、大法人による完全支配関係がある普通法人等に限る)会社です。つまり⑴の同族会社よりも経営者一族の影響が大きい状態であり、留保金課税制度の適用があります。
⑶ 非同族会社
同族会社とならない会社をいいます。
2. 同族会社の判定
⑴ 同族会社の判定
以下の事例を用いて具体的に判定してみたいと思います。
発行済株式数が100株の乙社 株主A:40株 株主B(A氏の妻): 5株 株主C(A氏の弟):10株 株主D:15株 株主E: 5株 その他:25株 |
※株主BはAの配偶者であり、また、株主AとCは兄弟関係があることから同族関係者に該当します。
【 計 算 】
Aグループ : 40株 + 5株 + 10株 = 55株
Dグループ : 15株
Eグループ : 5株
合計 75株 ÷ 100株 = 0.75 (75%)
上位3位以内の株主が占める割合が50%を超えるため、同族会社と判定されます。また、上位1位の株主が占める割合が50%を超えるため、資本金の額が1億円超の場合は特定同族会社と判定されます。
⑵ 同族関係者の範囲
同族関係者 (特殊の関係) の範囲に含まれている者は、特殊の関係のある個人と法人とに分けられます。具体的には親族のみにとどまらないため判定の際に注意が必要です。
特殊の関係のある個人
・株主等の親族(配偶者、六親等以内の血族、三親等以内の姻族)
・株主等と事実上婚姻関係と同様の事情にある者
・個人株主等の使用人
・上記以外の者で、株主等から受ける金銭やその他の資産により生計を維持している者
・上記(株主等の親族を除く)に該当する者と生計を一にする、これらの者の親族
特殊の関係のある法人
・同族会社であるかどうかを判定しようとする会社の株主等の1人が、他の会社の発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している場合のその他の会社等
3. 同族会社に対する規定
⑴ 行為又は計算の否認
同族会社が法人税の負担を減らすための取引や計算を行わないように、こうした行為や計算を認めたときには、税務署長が法人税の課税所得や法人税額を決めることができるというものです。
⑵ みなし役員
会社法上の役員でなくても、法人税法上は次の2つに該当する場合には役員認定されます。
① 法人の経営に従事している者であること。
② 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る)以外の者であること。
さらに、同族会社の場合には上記①に加えて以下の3つ全てに該当すると役員に認定されます。その者が株式等を5%超保有していた場合には、法人税法上役員認定される可能性が高いので注意が必要です。
① 主グループが、株主グループの所有割合が大きいものから合計したときに、はじめて50%超となるときにおけるこれらの株主グループのいずれかにその者が属していること。
② その者の属する株主グループの所有割合が10%超であること。
③ その者(配偶者等を含む)の所有割合が5%超であること。
⑶ 使用人兼務役員
同族会社は使用人兼務役員について、⑵みなし役員の株主グループの判定ですべてに該当する場合には、使用人兼務役員とされない役員と判定されます。
⑷ 留保金課税
個人所得税は累進税率によって課税されるため、法人が不必要な留保を行い配当しない場合、個人所得税は累進税率による配当課税が回避されて、個人と企業との税負担のアンバランスが生じます。少数首脳の意思により左右される同族会社においてはこれが行われることが予想されるため特定同族会社に該当する場合に限り、この制度が適用されます。
この制度は当期の所得等の金額のうち留保した金額から一定の調整をした金額に対して、10%~20%の累進税率で課税するというものです。
4. おわりに
同族会社においては意思決定が迅速に行える等のメリットがありますが、税制面で不利になりやい等のデメリットもあります。日本の会社はほとんど同族会社に該当しますので、同族会社特有の規定の内容を把握し、経営に役立てて頂ければ幸いです。
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