建設下請工事の手形サイトの基準が短縮されました
2024/11/25
●はじめに●
建設工事の下請代金などの支払いに用いられる約束手形(電子記録債権を含む)の支払い期間(サイト)が60日を超える場合、「割引困難な手形」に該当するとして下請代金支払遅延等防止法(下請法)や建設業法に違反する恐れがあるとする運用が11月1日に始まりました。国土交通省や保証会社の調査によると、振り出し側の建設会社がサイトを60日以内にしている割合は基準短縮前(10月現在)で3~4割であり、基準短縮開始の直近でも目立った改善は見られず、従来の慣行が続いている状況となっています。
目次
手形サイトの改正内容
下請法で指導対象とする割引困難な手形サイトの基準がこの11月から従来の120日から60日に短縮されました。つまり60日を超える手形は割引料が大きくなるなどの理由から割引困難とみなされることになります。下請法の対象業種から除外されている建設工事の下請負でも、この運用変更を踏襲し、国土交通省は9月に「建設業法令順守ガイドライン」を改定しました。それによると、元請が特定建設業者であり下請が資本金4000万円未満の一般建設業者の場合、サイトが60日を超える手形で下請代金を支払う行為が業法違反となる恐れがあると明確に示しました。
手形サイトが60日以内である割合
北海道、東日本、西日本の公共工事前払金保証事業会社3社が10月16日に発表した令和6年7月~9月期の建設業景況調査によると、支払手形の平均サイトを「60日以内」と回答した建設会社は全体の31・4%。4月~6月期から1・1ポイント上昇しましたが、いまだ低水準にあります。
主体とする工事業種別に60日以内と回答した割合を見ると、土木工事業が38・7%、建築工事業が30・5%、設備工事業が17・4%となっています。また、企業規模が大きいほど回答割合が高まる傾向があり、中小企業では手形支払期間の短縮について未だ情報が周知されていない可能性も考えられます。
手形に関する下請取引実態調査の結果
国土交通省の下請取引等実態調査(元下調査)では2023年6月末までの取引実態としてサイトを60日以内としている割合が37・6%。今後60日以内とする予定(検討中を含む)は40・3%でした。60日以内とする予定がない場合、その理由は「慣例」が過半数を占めています。
下請債権保全支援事業は当面は60日超も保証
国土交通省が行なう「下請債権保全支援事業」は下請会社が元請会社に対して持つ債権の支払いをファクタリング会社が保証し、元請からの債権回収を確実にする仕組みで、下請会社がファクタリング会社に支払う保証料の一部を建設業振興基金が助成するなどしています。国土交通省は「下請債権保全支援事業」に関する手形の取り扱いについて建設業団体などに通知をしました。それによると、サイトが60日を超える場合も当面は債権の保証・買い取りの対象とする予定ということです。それは、現時点でも相当程度の手形サイトが60日を超えて設定されており、同支援事業の目的が手形を受け取る側の下請会社の保護であることに配慮したためです。
ただし、保証・買い取りの対象とする手形のサイトは今後の取引実態を踏まえ適切な時期に60日以内とする予定となっています。
まとめ
元請建設業者が下請業者に外注費等を手形で支払う場合、手形の決済期間は60日以内とする必要があります。60日を超えるサイトの手形を支払いに使用している場合は指導の対象にもなりますので、まだ対応していない業者の方は早急に対応が求められます。また、しっかりと法令を守り適切な支払期間の手形を交付することで、下請業者に対しても元請業者の信頼が得られると考えられます。法令の改正に適切に対応し、信頼関係の持てるビジネスを心がけていきましょう。
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