高額特定資産の取得と消費税の関係について
2022/09/26
皆様の中で高額特定資産の取得をすると3年間の縛りがあると聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか?今回はその「3年の縛り」とそもそも「高額特定資産」とは何なのかについて説明していきたいと思います。
目次
1. 高額特定資産とは?
そもそも高額特定資産とは何なのでしょうか?名前から想像すれば高額な資産という事ではないかと思われるかもしれません。しかし、それではいくら以上が高額なのか判断に困ります。国税庁のホームページでは次のように記載されています。
『一の単位の取引につき、課税仕入に係る支払い対価額が 1,000万円以上(税抜) の棚卸資産・調整対象固定資産(※)』とされています。
※調整対象固定資産・・・棚卸資産以外の資産で 100万円以上(税抜) のもの
2. 3年の縛りとは?(免税事業者になれない?)
次は「3年の縛り」について解説をしていきます。原則課税を適用の期間中に高額特定資産を取得した場合、以下に示す2つの縛りが生まれます。
⑴ 免税点制度の適用制限 (3年間、免税事業者になれない) ⑵ 簡易課税選択届出書の提出制限 (2年間、簡易課税制度選択届出書を提出できない) |
例を用いて説明しますとR3.4.1~R4.3.31の原則課税を適用の期間中に高額特定資産を取得したとします。
まず⑴より免税事業の適用を受けることのできる期間が制限されます。下図にあるように、高額特定資産を取得した翌期の初日(R4.4.1)から、高額特定資産を取得した期の初日から3年を経過する期間(R6.3.31)までは免税事業者になることができなくなります。図だけを見ると、免税になれないのは2年間だけではないかと思うかもしれませんが、高額特定資産を取得した期というのは課税事業者であることが前提となっているため合わせて「3年間」の縛りとして説明されることがあります。
3. 3年の縛りとは?(簡易課税事業者になれない?)
次に⑵の縛りになりますが、こちらも図を見ていただくと2年間の縛りのように見えます。
制限期間も高額特定資産を取得した期の初日から、3年を経過する日の属する期間の初日の前日(R5.3.31)までと免税点制度の時と比べ制限期間のずれもあるように思うかもしれません。
ここで、簡易課税制度選択届出書に関して思い出していただきたいのは、適用を受ける課税期間の開始日の前日までに提出をする必要があることです。
⑵の縛りというのは簡易課税の適用に関してではなく、届出書の提出に関しての制限となっています。R5.3.31 まで届出書が提出できないという事は、R5.4.1~R6.3.31 は簡易課税の適用を受けることができません。
よって高額特定資産を取得した期のR3.4.1~R6.3.31の「3年間」は課税事業者であり、原則課税を適用する必要があります。
4. 簡易課税の適用を事前に受けていた場合
以上の話を踏まえると、高額特定資産を取得した後は必ず原則課税の適用を受ける必要がありそうですが、簡易課税の届出を高額特定資産取得の前から出していた場合はどうなるのでしょうか?
図のように、高額特定資産を取得した期首(R3.4.1)以前より簡易課税制度選択届出書を提出していたが、基準期間であるH31.4.1~R2.3.31の課税売上高が6,000万円であったため、R3.4.1~R4.3.31の期間は原則課税となっています。
R4.4.1~R5.3.31 の期間は基準期間の課税売上高からみるとR2.4.1~R3.3.31の課税売上高が500万円であるため免税事業者になるかと思いますが、今回の話のテーマである高額特定資産の取得の⑴の縛りがあるため、課税事業者となります。また、⑵の縛りである簡易課税制度選択届出書の提出の縛りもありますが、今回のケースでは届出書を事前に提出済みとなっており、R4.4.1~R5.3.31の基準期間の課税売上高は5,000万円以下なので、簡易課税の適用を受けることができます。
あくまで、縛りというのは「簡易課税の適用が受けられない」ではなく、「簡易課税制度選択届出書が提出できない」ことですので、上のような事例も考えられます。
5. まとめ
今回の内容のように資産の取得にあたって、その期以降で免税点制度を受けられなくなることがあります。場合によっては消費税の納税額にも大きく影響するでしょう。高額特定資産などの資産の取得を考えた際、「どんな制限があるのか」「自社の現状を把握」することで、取得のタイミングや消費税額の見通しを立てられるようになります。
高額特定資産の取得は頻繁に行う事ではないかもしれませんが、だからこそ正しく内容を把握し、先の事まで考える必要があると思います。
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