税務調査の概要と流れについて

税務調査という言葉を耳にしたことはありますでしょうか。何となく知っていても、具体的にどういったことを行うのか分からない方もいらっしゃるかもしれません。そこで、概要や流れについてある程度理解することで、実際に自身が立ち会うことになった際に必要以上に焦りや恐怖を感じなくなるはずです。今回は税務調査について概要や流れについてお話していきます。

税務調査とは、国税庁が管轄する税務署などによって、納税者が正しく税務申告を行っているか調査することです。具体的には、税額を計算した会社の担当者に質問したり帳簿書類等を検査したりするほか、その会社と取引関係にあると認められる第三者に対しても同じように質問し、検査することで行われます。これらの根拠は「国税通則法第7章の2」に列挙されています。

税務調査には「強制調査」と「任意調査」の2種類があります。それぞれの特徴は以下の通りです。

 

■ 強制調査

国税局査察部が令状をもって強制的に行う調査のことです。対象は脱税の疑いがある納税者で「脱税額が1億円を超え、かつ悪質な隠ぺい工作がなされたと想定される事案」に限られるのが特徴です。強制の名の通り、納税者はこの調査を拒絶することが出来ません。

 

■ 任意調査

一般的な税務調査の大半が、この任意調査に該当します。対象は脱税の疑いのない、多くの法人です。実施される場合、納税者または担当税理士宛てに電話または文書で1週間以上前に事前通知があるのが一般的です。しかし、現金で商売を行う事業者に対してなどありのままの事業実態を確認する必要がある場合には、事前通知なく抜き打ちで調査することも認められています。

また、調査官には「質問検査権」が認められており、正当な理由なく帳簿書類などの提示の要求に応じない場合罰則があるため、注意しましょう。

① 税務署からの事前通知

上述した通り、納税者または担当税理士に対し、あらかじめ税務署から実地調査の開始日時や調査の目的等が通知されます。なお、合理的な理由がある場合には調査日時の変更の協議を求めることが可能です。

 

② 実地調査

原則数日間にわたり調査が行われます。調査官の質問に答える他、帳簿書類や領収書などの証憑類や現金や預金通帳、有価証券などを提示します。また、必要がある場合には納税者の承諾を得たうえで提出された書類を預かったり、又は取引先に対し質問や検査を行ったりする場合があります。

 

③ 調査終了の手続き

調査の結果、更正(税務当局が調査により申告額や追加納税額などを決め、会社に通知すること)や決定(申告義務があるのに申告書の提出がない場合、税務当局が申告額や納税額を決めること)をすべき点がない場合はその旨が書面にて通知されます。

逆に、更正や決定をすべき点がある場合には、その調査の結果や理由が会社に説明され、修正申告等が勧奨されます。この場合、修正申告等を提出した場合には不服申立をすることができませんが、更正の請求をすることはできる旨が説明され、その旨を記載した書面が交付されます。

税務調査により申告内容について誤りを指摘されたとしても意図的な不正行為等悪質なものでなければ罰せられることはなく、修正申告のみで済みます。そのため、税務調査実施の通知が来たとしても過度に恐れたり慌てたりする必要はありません。まずは顧問税理士に必要書類や税務調査の流れ、対処方法などを事前に相談しましょう。調査当日は質問の内容によっては税理士に回答を任せることも可能です。

また、調査官から聞かれた質問に対しては正直に、かつ質問されたことのみに回答し、その場で分からない場合はきちんと調べてから後日回答するようにすれば問題ありません。曖昧な回答や聞かれてもいないことを回答すると、調査官に不信感を与え何らかの疑いをかけられる可能性があるため注意しましょう。

税務調査と聞いて身構える必要はありません。自身ですべて対応しようとするのではなく、顧問税理士と協力して落ち着いて対処するようにしましょう。