減価償却資産の償却方法と会計処理について解説
2024/10/28
減価償却という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、実際にどういうものをどういう風に処理しているのかについて知っている人は多くないと思います。
会計のルールの一つである減価償却の償却方法や仕組みを理解することで、設備投資等に対する見方が変わるかもしれません。
今回は、減価償却の償却方法と会計処理を主に解説していきます。
目次
減価償却とは
減価償却とは、減価償却資産の取得価額を一定の方法によって各年分の必要経費として配分していく手続です。
減価償却資産の取得価額は、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の法定耐用年数にわたり分割して必要経費としていくべきものです。法定耐用年数は財務省令の別表に定められています。
事業などの業務のために用いられる建物、建物附属設備、機械装置、器具備品、車両運搬具などの減価償却資産は、一般的には時の経過等によってその価値が減っていきます。他方、土地や骨とう品などのように時の経過により価値が減少しない資産は、減価償却資産ではありません。
減価償却の経理処理
減価償却の計算方法は、大きく「定率法」と「定額法」に分けられます。
定額法とは、固定資産の取得価額を耐用年数で除した金額を償却額として、毎期同額の減価償却費を計上する方法です。毎期一定の償却費を計上することで費用の予測が容易になります。
定率法とは、固定資産の取得価額のうち未だ償却していない金額(未償却残高)に一定の償却率を乗じて減価償却費を計算する方法です。耐用年数の初期に多額の減価償却費を計上でき、後半になるにつれて減価償却費が小さくなる点に特徴があります。
例えば、9月決算 令和6年10月1日 パソコン 取得価額 15万円、直接法 耐用年数4年の場合。
取得時 R6.10.01 パソコン / 現預金 150,000円 |
定額法 償却率0.25 の場合 R07.09.30 減価償却費 / パソコン 37,500円 R08.09.30 減価償却費 / パソコン 37,500円 |
R09.09.30 減価償却費 / パソコン 37,500円 R10.09.30 減価償却費 / パソコン 37,500円 |
定率法 償却率0.5 保証率0.12499(18,748.5円) 改定償却率1.0 の場合 R07.09.30 減価償却費 / パソコン 75,000円 R08.09.30 減価償却費 / パソコン 37,500円※1 R09.09.30 減価償却費 / パソコン 18,750円 R10.09.30 減価償却費 / パソコン 18,750円※2 |
※1 (150,000-75,000)×0.5
※2 (150,000-75,000-37,500-18,750)×0.5=9,375
18,748.5>9,375 → (150,000-75,000-37,500-18,750)×1.0
定率法の場合は定額法に比べて複雑になっています。定率法の場合は残存簿価に償却率を乗じるためそのまま計算していくと耐用年数を超えて償却をしてしまうことになってしまします。そのため、保証率と改定償却率を設け、「取得価額×保証率の額>残存簿価×償却率」となった場合に「(残存簿価-1)×改定償却率」という計算をすることになります。
どちらの償却方法を選択するかは企業の判断になりますが、法人税法では今後取得する建物、建物付属設備、構築物は定額法を採用することが強制され、また、車両運搬具、機械装置、工具器具備品は定率法を採用することが原則となっています。原則が定率法の固定資産の償却方法を変更したい場合は、税務署に届出を提出することで変更することができます。
(参考 主な減価償却資産の耐用年数表)
(参考 減価償却資産の償却率表)
減価償却の特例
・少額減価償却資産
青色申告である中小企業(大規模法人の子会社を除く資本金1億円以下の法人)のうち常時雇用する従業員が500人以下の企業については、取得価額が30万円未満の減価償却資産について全額を一括で費用とすることができます。ただし、事業年度の上限額は300万円とされているため、年間の取得価額の合計が300万円を超えた部分はこの特例を利用できないので注意が必要です。
・一括償却資産
10万円以上20万円未満の減価償却資産については、耐用年数によらず事業に使用した年から3年間で均等償却することができます。残存価額を0として償却期間も決まっているため、厳密な個別管理の必要がない上、償却資産に課税される固定資産税が非課税になるというメリットがあります。
(参考 国税庁HPNo.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例)
令和4年度税制改正により、貸付(主な事業として営まれるものを除く)用の減価償却資産については、一時の費用とすることができる10万円未満の少額減価償却資産や少額減価償却資産や一括償却資産の特例の対象から除かれました。これにより、自社の主な事業用のものではなく、貸付用のものは、取得価額の全額を一時に損金算入することができなくなり、通常の減価償却により損金算入することになります。
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