青色欠損金の繰越控除と繰戻し還付についてそれぞれ解説します
2023/07/03
法人税法では、ある事業年度に生じた欠損金について、次年度以降の所得と通算すること(欠損金の繰越控除)、また前年度に繰り戻して法人税額の還付請求を受けること(欠損金の繰戻し還付)が認められています。
目次
欠損金額とは法人税法上で使用される用語で、「各事業年度の所得の金額の計算上その事業年度の損金の額がその事業年度の益金の額を超える場合におけるその超える部分の金額」をいいます。つまり法人税を計算する際の所得金額(=益金-損金)がマイナスである状態であることを意味しています。
青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金(これを「青色欠損金」といいます。)は、翌事業年度以後10年間にわたり繰り越すことが認められており、翌事業年度以後に損金の額に算入することができます。逆を言えば、欠損金の生じた事業年度から10年間経過し控除しきれなかった欠損金については、切捨てられることになります。
(注)平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年です。
例えば、X5年3月期の欠損金額が500万円、X6年3月期の所得金額が800万円の場合、X6年3月期の税額計算においては800万円から500万円を引いた300万円に対して税率を乗じて計算します。(この計算例は中小法人等に限ります。)
青色欠損金の繰越控除を適用するためには、次の要件を満たす必要があります。
① 欠損金の生じた事業年度について青色申告書を提出していること
② その翌年から毎年連続して確定申告書を提出していること
③ 欠損金の生じた事業年度について帳簿書類を保存していること
無申告の年度があると、この取扱いは適用されません。また欠損金が複数の年に生じている場合は、最も古い年度で生じた欠損金から繰越控除の適用ができます。
中小法人(期末資本金の額が1億円以下で、資本金5億円以上の大法人の100%子会社を除く。)であれば、繰越控除の限度額の制限はないため、所得金額までは全額繰越控除できます。
上記の「青色欠損金の繰越控除」は、欠損金の生じた事業年度以後に所得金額(黒字)が発生しなければ繰越控除できません。そこで上記制度とは別に、欠損金の生じた事業年度において、青色欠損金を翌期以降に繰り越さないで過去1年間(還付所得事業年度)の所得の金額と通算することにより、還付所得事業年度において税務署に納付した法人税額の一部の還付を請求できる制度が設けられています。この制度のことを、「欠損金の繰戻し還付」といいます。
つまり、前期が黒字で当期が赤字の場合、当期に生じた欠損金について「青色欠損金の繰越控除」と「欠損金の繰戻し還付」の制度を選択適用することになります。
欠損金の繰戻し還付の適用を受けるための要件は次の通りです。
① 欠損金の生じた事業年度について青色申告書を提出していること
② 還付所得事業年度から欠損金の生じた事業年度の前事業年度まで連続して青色申告書
を提出していること
③ 欠損金の生じた事業年度の青色申告書を提出期限までに税務署に提出し、還付請求書
を請求すること
法人税の還付金額は、次の算式により計算します。
例えば、欠損金の生じた事業年度の欠損金額が100万円、還付所得事業年度(前期)の所得金額が500万円、法人税額150万円の場合は以下の通りです。
(注)法人が還付金額の計算の基礎として還付請求書に記載した金額が限度となり、
分母の金額が限度になります。
この制度は中小法人や解散する事業年度にのみ認められている制度になります。
なお、欠損金の繰戻し還付を適用した場合には、その還付金額の計算の基礎となった欠損金額については当然ながら青色欠損金の繰越控除の適用外となるため、翌期以降に繰り越すことはできません。
3 留意点
青色欠損金の繰越控除については、実務上特に意識しなくてもきちんと申告し帳簿書類を保存しておけばその適用については問題がないと思いますが、前期が黒字・当期が赤字で欠損金の繰戻し還付の適用ができる場合には、どちらの制度を利用した方がいいのかという点が迷うところになります。先行きの経営が不透明である場合や資金繰りの関係でキャッシュが直ぐに必要な場合には、欠損金の繰戻し還付の制度を受けることをオススメします。
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