デジタル遺産~ネット上の遺産見落としていませんか?
2023/08/16
現在、相続人の約3割が被相続人のネット銀行口座や仮想通貨(暗号資産)といった「デジタル資産」を相続時に発見できないそうです。ここでは、そのようなデジタル資産の相続の現状と対策について説明します。
1.デジタル資産
デジタル資産とは、インターネット上で管理する無形の資産全般のことを言い、以下のようなものを指します。
1. ネット銀行やネット証券の口座
2. 仮想通貨やNFTといった暗号資産
3. 電子マネーや電子決済サービスの残高 など様々です。
デジタル資産の相続の問題点は、相続人が存在を知らないことです。通帳で管理している現預金や土地・建物といった不動産などは現物や登記などがあり把握しやすいですが、デジタル資産はオンライン上で管理されており相続人が気付きにくいです。また、存在を把握していたとしても、端末やサイトにログインできなければ元も子もありません。
相続人がデジタル資産を発見できないことによって発生するリスクは、大きく分けて3つあります。
① 遺産分割やり直しのリスク
相続人全員で遺産分割協議が成立していたとしても、後から別の財産が見つかれば再度遺産分割協議を行う必要が生じます。改めて相続人全員のスケジュールを調整したり、新たに遺産分割協議書を作成するのは、かなりの手間になってしまいます。
② 金銭的な損失を被るリスク
例えば、ネット証券を通じて信用取引をしていた株価が暴落し最低委託保証金維持率を下回った場合に、追加の保証金を差し入れる必要があります。
さらに、スマホアプリのサブスク利用料など支払債務が発生する資産があれば、解約が遅れるほど支払額がかさんでしまいます。
③ 雪だるま式に膨らんだ延滞税の支払い
相続税の納付期限は、原則として被相続人が死亡した日から10ヶ月です。遅れた分には年率2.4%、2ヶ月経過後は年率8.7%が追徴されます。さらに相続人自身がデジタル資産の存在に気付けず、国税当局から申告税額の更生を受ける事態に陥れば、無申告加算税の発生により最大50%を上乗せして納めなければなりません。
一般的にデジタル資産は、① 窓口がオンライン上、② オンライン上で全ての手続きが完結、 ③ 郵送による通知、などのアクションがないといったケースが多いです。そのため、本人しか詳細を知らず、相続発生時に家族はIDやパスワードが分からずアクセスできないという状況に陥ります。保有しているデジタル資産の会社とログイン用のIDとパスワードを記録しておく必要があります。しかし、プライバシーの観点から生前に全てを伝えておくということはあまり現実的とは言えません。
エンディングノートは、自分の人生の終末について記したノートです。遺言書とは異なり書式が自由なため、いつでも気軽に書き残しておくことができます。
しかし、単なる「メモ」に過ぎないため法的拘束力がなく、災害による紛失リスクや、そもそも相続人がエンディングノートを発見できない可能性があることに注意が必要です。
金融機関や事業会社が提供しているデジタル資産管理サービスというものがあります。専用サイトを通じてデジタル端末の保管場所や各種サービスの契約情報といった情報を預けておくと、相続発生時にあらかじめ指定しておいた受取人に引き継ぐことができるというものです。
死後事務委任契約とは、本人が亡くなった後に死亡届の提出や葬儀の手配、医療費の支払といった各種手続きを本人に代わって行うよう依頼する契約です。任意の誰かにデジタル資産の処分を任せられるということです。
なお、過去には相続人である家族以外と死後事務委任契約を締結した結果、家族と受任者の間で裁判沙汰になったケースもあるので、誰に委任するかは慎重に検討する必要があります。
4.おわりに
ほとんどの人が何らかのデジタル資産を保有している現代において、デジタル資産の生前対策は誰にとっても見過ごせません。相続でお困りのことがありましたら掛川総合会計事務所にお気軽にご相談ください。
(参考)エヌピー通信社「相続人の3割が直面 デジタル遺産で納税地獄」
月刊所長のミカタ2023年5月号
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