「物流の2024年問題」への対応
2023/10/30
2024年4月以降、トラックドライバーの労働時間に規制がかけられることにより、これまでのように荷物の輸送が円滑に行えなくなる可能性が指摘されています。
この課題を物流業界だけの問題とせず、政府を始め、荷主や一般消費者など物流に係わる全ての分野で課題解決が求められています。
私もネット通販を利用していますが、店舗に行かなくてもスマートフォンやパソコンで注文すれば世界中の商品が数日で手に入り重宝しています。物流業界は製造業、販売業などをはじめとする日本の全ての産業を繋げる重要な役目を担っています。
一方で迅速な物流を支えるため、日本の物流業界の現状は長時間労働が常態化し、また人手不足が深刻な課題になっています。
この解決策として、トラックドライバーの長時間労働の解消などによる労働環境の改善を目指し、2024年4月からトラックドライバーの時間外労働時間の上限が設けられることになり、その施策の影響が懸念されています。
1. トラック事業者における2024年4月改正の内容
2024年4月施行のトラックドライバーの労働環境に関する主な改正内容は以下の通りです。
① 時間外労働時間の上限が年間960時間に制限されます
② 原則として1年間の拘束時間は3,300時間以内、1ヶ月の拘束時間は284時間以内と
されます(労使協定により一定の条件の下で延長可)。
③ 1日の拘束時間は原則13時間以内とされます(宿泊を伴う長距離貨物運送などの例外が
あります)。
④ 1日の休息時間は11時間以上を基本として、9時間を下回らないこととされます
(宿泊を伴う長距離貨物運送などの例外があります)。
⑤ 運転時間は2日平均で1日あたり9時間以内、2週間平均で1週間あたり44時間
以内とされます。
⑥ 連続運転時間は4時間以内とし運転の中断時には原則として休憩を与えることとされます。
例えば①の時間外労働時間で考えると、仮に1ヶ月の労働日数が20日だとすると1日あたりの時間外労働時間が4時間である場合、年間の時間外労働時間は960時間になります。
960時間の規制を設けても毎日4時間の時間外労働が認められるということですから、現状のトラックドライバーの時間外労働時間がいかに長いかが推測できます。
厚生労働省が公表している資料によると、約18パーセントのトラック事業者で、1日の時間外労働時間が4時間を超えており、そのうち4%の事業者では7時間を超えていると報告されています。
2. 2024年4月改正がトラック事業者に及ぼす影響
トラックドライバーの労働環境の改善のための施策に伴って生じる様々な問題が「物流の2024年問題」です。
改正によって次のような影響が懸念されています。
① トラック事業者への影響
・トラックドライバーの労働時間が制限されることによる輸送能力の低下が想定されるが、
人手不足のためこれを補うための人員確保が困難である。
・受託業務の削減により運賃収入が減少する可能性がある。
・運賃収入の減少によりドライバーの賃金アップへの対応が困難になる可能性がある。
② トラックドライバーへの影響
・業務量や時間外労働時間の減少による賃金の減少する可能性がある。
・賃金の減少による従業員の他産業への流出する可能性がある。
③ 荷主への影響
・荷物配送の遅延が生じる可能性がある。
④ 一般消費者への影響
・配送に時間がかかるようになり急ぎの配送に対応してもらえない恐れがある。
・生鮮食品の通販が困難になる恐れがある。
内閣府が示した「物流改革に向けた政策パッケージ」によると、2024年4月改正について対策を講じない場合、現状を100%とした場合、2024年で14%、2030年には34%の輸送力が不足するとされています。
3. 2024年問題解決のためにできること
このように、トラックドライバーの労働環境改善のための施策は様々な分野に影響を及ぼしそうです。それは、今までは本来トラックドライバーが担うべきではない責任まで、無料のサービスとしてドライバーが行っていた業務があるということも出来ます。
本来トラックドライバーの業務ではないものについては、本来の責任者の業務に戻すことが必要であるとともに、それを含め2024年問題を解決するために、次のような改善策が考えられます。
① 次の2つはトラック事業者との信頼関係や交渉力が必要になります。
・荷役作業や検品作業は本来行うべき荷主が行う
・適正運賃での輸送請負をする
② 次の2つは現状分析とシミュレーションが必要になります。
・作業効率の改善による労働時間の短縮
・固定給から業績給への賃金体系の変更
・複数社や複数支店で協力し中継点でのドライバー交代による輸送
③ 梱包の工夫
・かさばる商品の梱包を見直し荷物をコンパクト化
④ 消費者が取り組める改善策もあります。
・宅配便の再配達の削減、時間指定の活用、営業所やコンビニ、置き配、
ロッカー受け取りの活用、再配達料の導入
・まとめ買いによる発注回数の削減
4. まとめ
物流の2024年問題の根本は、現状のトラックドライバーの労働環境の厳しさにあります。常態化する長時間労働が人手不足を招き、さらなる長時間労働に繋がっています。長時間労働の改善、物流業界の人手不足の解消、トラックドラーバーの所得の維持、輸送能力の維持、これらを総合的に改善する課程で生じたのが2024年問題です。
この問題は、物流業界だけで解決する問題ではなく、生産者、販売者、一般消費者、全ての人たちが問題解決について考え、解決への行動をする必要があります。便利になった現代社会は物流で支えられていることを一人一人が認識し、物流業界の労働環境改善に取り組まなければなりません。
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