税理士法人掛川総合会計事務所

所得税における為替差損益について

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所得税における為替差損益について

所得税における為替差損益について

2024/12/02

 グローバル化が進む昨今、高額な外貨預金の預け入れや外貨建て債券などの購入が行われ、為替相場の変動も相まって、多額の為替差損益が生じるなどし、為替差損益の課税関係は重要になっています。今回は、確定申告シーズンが近づいてきていることもあるので、所得税における為替差損益について解説したいと思います。

目次

    外国の不動産売却時の所得における為替差損益

    事例

     外国の不動産売却時の所得税における為替差損益の説明にあたり、事例を使って考えます。

     外国の土地を50万ドル(140円/1ドル)で購入し、数年後、55万ドル(100円/ドル)で売却しました。譲渡費用は1万ドルかかっています。

    外貨建取引の換算

     外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れなどの取引をいいます。したがって、今回の事例は外貨建取引に該当することになります。外貨建取引を行った場合の各種所得の金額は、その外貨建取引の金額をその時の為替相場により円換算した金額により計算することとされています。

     (所得税法第57条の3)所得税法 | e-Gov 法令検索

     為替差損益部分のみを雑所得に区分するのではなく、譲渡対価換算額が譲渡収入として取り扱われることに注意しましょう。この事例において、譲渡所得の金額を求めると以下の計算式によります。

     

    譲渡収入:55万ドル×100円=5,500万円

    取得価額:50万ドル×140円=7,000万円

    譲渡費用:1万ドル×100円=100万円

    譲渡所得:5,500万円−(7,000万円+100万円)=△1,600万円

    為替相場

     適用される為替相場は、その取引日における仲値(TTM)によることとされています。ただし、受領した外国通貨を直ちに円に替えた場合は対顧客直物電信買相場(TTB)により円換算でき、外国通貨を購入後直ちに支払をする場合には対顧客直物電信売相場(TTS)を採用することができます。

     また、事業等の所得を生ずべき業務に係る金額の計算では、継続適用を要件として、収入・資産についてはTTBにより、費用・負債についてはTTSを採用することができます。

    外貨から外貨への転換の所得税における為替差損益

    預貯金の預替え

     銀行に外貨預貯金を預け入れた場合に、利息が発生すると利子所得になり、利息部分についてはその発生時の為替相場で利子所得が認識されます。しかし、元本部分については、同一通貨で同一の金融機関に預け替えた場合は、外貨建取引に該当しないこととされ、為替換算を行う必要はありません。

    (所得税法施行令第167条の6 2項)所得税法施行令 | e-Gov 法令検索

    外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い|国税庁

    外貨預金の他の外貨預金への預替え

     ⑴に対し、外貨預金を他の外貨預金へ預け替えた場合には、為替差損益の認識が必要となります。たとえばドル預金をユーロ預金に預け替えた場合が該当します。

    保有する外国通貨を他の外国通貨に交換した場合の為替差損益の取扱い|国税庁

    外貨建資産購入の所得税における為替差損益

     1.2で説明している通り、外貨建取引を行った場合には、外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引時における外国為替相場により換算した金額により所得金額を計算することとされています。

    (所得税法第57条の3)所得税法 | e-Gov 法令検索

     例えば、1千万円を証券会社に預け入れて10万ドルに替え(1ドル=100円)、それから数年後に10万ドルで額面10万ドルの社債を購入(1ドル=103円)したとします。社債取得前は未実現であった為替評価差額が、外貨建ての社債取得により為替差損益として実現したことになります。

    為替差益:(103円−100円)×10万ドル=30万円

    (所得税法第36条1項)所得税法 | e-Gov 法令検索

    まとめ

     今回は所得税における為替差損益について説明させて頂きました。為替差損益については、主に為替差損益の所得区分・円換算に用いる交換レート・為替差損益の認識時期などが問題となってきます。

     また、毎年税制改正が行われますが、各税法においても国際課税についての改正が頻繁に行われています。時代が進むにつれて、所得税に限らず為替差損益の税務の重要性は強まってくることと感じます。

     今回の取り上げた事項に限らず、会計・税務でお困り事がございましたら(税)掛川総合会計事務所までご連絡頂ければ幸いです。

    監修 石川勝也税理士

    東海税理士会掛川支部所属/税理士登録2004年(平成16年)/税理士登録番号 99199/大学卒業後、会計事務所に入社し税理士を目指す。/税理士試験合格科目:簿記論、財務諸表論、法人税、消費税、相続税/2005年独立開業/2009年税理士法人掛川総合会計事務所を設立/2023年代表社員に就任。 

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