消費税の税込経理と税抜経理の違い~両者を比較し解説~
2024/05/27
消費税の課税事業者である事業者は、法人税又は所得税の所得金額の計算にあたり、消費税の会計処理につき「税込経理」と「税抜経理」の2つの経理処理が認められています。税込経理は消費税を本体価格に含めて経理する方法で、税抜経理は消費税を本体価格と区分して経理します。
どちらの方法を選択しても、納税する消費税額は同じとなりますが、所得金額の計算や仕訳、決算書の表示方法は異なってきます。今回は、2つの経理処理の違いについて、具体例を用いて解説します。
目次
【具体例1】
・7,700円(内消費税700円)で仕入れた商品を11,000円(内消費税1,000円)で販売。
・原則課税を適用し、取引は上記のみとする。
<税込経理>
(1) 仕入時
(借方) | (貸方) |
仕入 7,700円 |
現金 7,700円 |
(2)売上時
(借方) | (貸方) |
現金 11,000円 | 売上 11,000円 |
(3)決算時
(借方) | (貸方) |
租税公課 300円 | 未払消費税 300円 |
<税抜経理>
(1)仕入時
(借方) | (貸方) |
仕入 7,000円 | 現金 7,700円 |
仮払消費税 700円 |
(2)売上時
(借方) | (貸方) |
現金 11,000円 | 売上 10,000円 |
仮受消費税 1,000円 |
(3)決算時
(借方) | (貸方) |
仮受消費税 1,000円 | 仮払消費税 700円 |
未払消費税 300円 |
税込経理 |
税抜経理 | |
売上 | 11,000円 |
10,000円 |
売上原価(仕入) |
7,700円 |
7,000円 |
売上総利益 |
3,300円 |
3,000円 |
販売管理費(租税公課) |
300円 |
0円 |
営業利益 | 3,000円 | 3,000円 |
- 最終的な営業利益はどちらも同じとなりますが、税込経理の方が基本的に売上総利益を大きく表示することができます。
税込経理の場合の損金算入時期
- 税込経理をした場合、納付する消費税は租税公課などの費用科目で処理することを説明しました。この場合、消費税の損金算入の時期はいつになるのでしょうか。
これに関しては、原則として申告をした事業年度の損金となります。消費税は申告納税方式の税金であり、納税者の申告により納めるべき税額が確定するためです。よって申告書を税務署に申告した日の属する事業年度の損金となります。
ただし、例外として、事業年度が終了して申告期限がまだ来ていなくても、申告書に記載した消費税額を損金経理により未払金に計上したときは、その損金経理をした事業年度で損金算入が認められます。実務的には、後者の処理をすれば法人税の所得金額がその分だけ減らすことができるため採用されているケースが多いです。
<原則>
(決算時) 処理なし
(納付時) 租税公課/現金
<例外>
(決算時) 租税公課/未払消費税
(納付時) 未払消費税/現金
なお、消費税が還付される場合も同様の考え方となり、原則は申告をした日の属する事業年度の益金となり、例外として還付される消費税を決算時に収益(未収入金)に計上した場合はその未収経理をした事業年度の益金となります。
終わりに
消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理のみとなり、税抜経理をすることはできません。
建設業を営む事業者は、公共工事の入札申請書類の記載が税抜きで求められるものが多いので、税抜経理を行った方が良いケースが多いかと思われます。
また、税抜経理であれば消費税を取引価格に含めず区分経理するため、本体価格のみの損益が把握でき、また仮払消費税・仮受消費税が表示されるため納税予測の観点からも有用と考えられています。
自社がどちらの処理方法を採用したら良いかお困りになりましたら、お気軽に掛川総合会計事務所にご相談ください。
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