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消費税、非課税と軽減税率はどちらが安い?

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消費税、非課税と軽減税率は
どちらが安い?

消費税、非課税と軽減税率はどちらが安い?

2024/08/16

 6月10日のブログ消費税の非課税売上と仕入税額控除で医療機関の診療報酬のように消費税が非課税とされる取引は、非課税対価の中に事業者が仕入の際に負担した消費税相当額が含まれていることを書きました。では、非課税と軽減税率では、実際どちらの方が安い価格になるのでしょうか?仮の事例で考えてみましょう。

目次

    非課税取引と軽減税率

     非課税取引とは、その取引の性質や社会政策的配慮から消費税を課税しない取引として消費税法に規定されている取引を言います。

     取引の性質から非課税とされているものは、例えば、土地の譲渡や貸付けのように、使用しても消費されないものの取引があります。消費税は消費という行為に担税力を認めて課税するという考えから、使用しても消費されないものは非課税とされています。土地はいくら使用しても消費されて無くなるものではありませんね。

     他方、社会政策的配慮から非課税とされている取引は、医療機関の社会保険診療報酬や、住宅の貸付けなどがあります。これらは、国民の日常生活に欠かせないサービスであるため消費税が課税されないこととされています。

     次に、軽減税率ですが、こちらも非課税と同様に、社会政策的配慮から標準税率より低い税率の消費税を課税する取引です。現在の我が国の消費税の標準税率は10%であり、一方軽減税率は8%の1つのみですが、例えばフランスのように軽減税率を複数設定している国もあります(注1)。日本における軽減税率の8%は、食料品と定期購読の新聞が該当し、日々の生活に欠かせない支出や民主主義を支える知識への課税を最低限とするなどの趣旨から消費税の負担が軽減されています。

    (注1)フランスの付加価値税は標準税率20%の他に、旅客宿泊外食サービスは10%、食料品等は5.5%、新聞や医薬品等は2.1%の税率で課税されています(諸外国における付加価値税の概要)。

    非課税取引のキャッシュフロー

     非課税も軽減税率も、どちらも社会政策的配慮から設けられた制度ですが、結局、非課税と軽減税率とでは、どちらがより商品やサービスの対価は安くなるのでしょうか?軽減税率は8%ですが非課税には消費税はかかりません。イメージとしては、非課税の方が安いと考えたくなりますね。そして、社会的配慮を重視するなら、なぜ、生活必需品である食品が非課税ではないのでしょうか?

     まずは、非課税取引のキャッシュフローを通してその仕組みを考えてみましょう。仮に食品が非課税だったとした場合を考えます。極端な例ですが、非食品である材料を仕入れて食品を製造し販売する場合を考えてみます。材料の仕入値は税抜価格で1,000円とします。消費税が課税されるため、仕入業者には1,100円支払います。様々な経費は今回は無視して、このとき200円の利益を得るためにはいくらで販売すれば良いでしょうか?仕入の時に支払った金額は1,100円ですから、1,300円で販売すれば200円のお金が手許に残ります。売上の1,300円は非課税なので、消費税は課税されない代わりに、事業者は仕入に係る消費税100円の仕入税額控除も受けることができません。消費税の非課税は、一般的に考える非課税とは違い、仕入に掛かる消費税が販売価格に上乗せされています。

    軽減税率のキャッシュフロー

     次に、現在の日本の消費税の場合を考えてみます。2の非課税の場合と同じ例で比較してみます。この場合、売上は軽減税率8%の課税取引とします。事業者は課税売上に掛かる消費税から仕入税額控除をすることが出来ます。この場合、事業者は1,100円の仕入に対し1,296円で販売すれば手許に200円が残ることになります。税込売上金額である1,296円と税込仕入金額である1,100円の差額は196円ですが、事業者は仕入税額控除によって売上に掛かる消費税96円と仕入に係る消費税100円の差額の4円を国から還付を受けることが出来るため、結果として200円手許に残ります。

    非課税と軽減税率の比較

     前述の2,3の例では、事業者が同じキャッシュを手許に残すためには、非課税よりも軽減税率の方が販売価格は安く設定できることが分かりました。この例は便宜的に設定したものなので、全てが同様になる訳ではありませんが、軽減税率の方が非課税よりも価格を安く抑えられる余地があるということが分かると思います。仮に軽減税率が5%とか3%などの税率だった場合にはさらに軽減税率の方が価格を安く設定することが出来ます。興味のある方は、是非色々な税率と利益率を設定してシミュレーションしてみてください。

    まとめ

     いかがですか?非課税と軽減税率の違いが分かりましたか?販売価格を低く抑えることを主眼に置くと、非課税より低率の軽減税率を設定する方が消費者にも事業者にも優しい税制になると言えそうです。非課税だから負担が少ないと安易に考えてしまいがちですが、実は一概にそうとも言えません。日本医師会などはかつて診療報酬の非課税を税率0%の課税取引に変えるよう政府に求めていた時期があります。しかし、非課税を低率の課税取引にすることは、国の税収を減らすことにもなるため、なかなか実現に至らず今日に至っています。この記事を通して、消費税の非課税と軽減税率の違いについて興味をもっていただけたら幸いです。

    監修 石川勝也税理士

    東海税理士会掛川支部所属/税理士登録2004年(平成16年)/税理士登録番号 99199/大学卒業後、会計事務所に入社し税理士を目指す。/税理士試験合格科目:簿記論、財務諸表論、法人税、消費税、相続税/2005年独立開業/2009年税理士法人掛川総合会計事務所を設立/2023年代表社員に就任。 

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