ふるさと納税の「193万円キャップ」とは
2026/08/10
目次
はじめに
最近、ふるさと納税のニュースなどで見かける「193万円キャップ」のキャップ(Cap)とは、「上限」や「頭打ちの制限」という意味です。英語の「帽子のキャップ(蓋をする)」から転じて、ビジネスや税制の分野では「これ以上の金額にはさせないための上限設定」という意味で使われます。これは、令和8年税制改正で決まった「超高所得者に対するふるさと納税の規制」を指しています。
193万円キャップの概要
ふるさと納税をすると寄付額の一部が所得税及び住民税から控除されますが、その中で一番インパクトが大きいのが「住民税の特例控除」という枠です。これまでは所得が高ければ高いほど、この特例控除の金額も制限なく数百万、数千万と膨らんでいく仕組みでした。
これが、令和9年1月寄附分からは、多額の寄付をしても、住民税の特例控除額は「最大193万円まで」で制限(キャップ)が掛けられることになりました。背景には、高額所得者が過度に得をしているという批判があったためです。年収が数億円あるような富裕層が、ふるさと納税で「純金の小判」や「高級スーツの仕立券」といった数百万〜数千万円相当の超高額な返礼品を実質2,000円の負担でもらっているケースが続出し、問題視されました。そこで政府は「さすがにこれ以上はダメ」と蓋(キャップ)をしたわけです。
では、ふるさと納税の控除額が制限に係る寄付額はいったいいくらになるのでしょうか。その金額を知るためには、まず、ふるさと納税で寄付年の所得税及び翌年の住民税が控除される仕組みについて具体的に確認しましょう。
ふるさと納税制度の仕組み
ふるさと納税をした寄付金は、確定申告によって清算する方法と、その全額が寄付の翌年の住民税から控除されるワンストップ特例制度の2つがありますが、ここでは原則の控除方法である確定申告によって清算する方法を取り上げます。確定申告による清算による場合は、寄付額の一部が寄付年の所得税から控除され、残りの控除額は翌年の住民税から控除されます。
ふるさと納税限度額の仕組み(確定申告によって清算する場合)
確定申告による清算の場合、所得税及び住民税から控除されるふるさと納税寄付額は以下の①②③の合計額になります。
① 所得税からの控除
所得税の控除は所得控除として、寄付年の(控除額×税率)分の負担が軽減されます。
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(寄付額 ※ - 2,000円) × 所得税率※※ ※ 寄付額は総所得金額の40%を限度とします ※※ 復興所得税及び防衛特別所得税を含む所得税の最高税率は45.945%です |
② 住民税の基本控除
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(寄付額 ※※※ ― 2,000円) × 10% ※※※ 寄付額は総所得金額の30%を限度とします |
③ 住民税の特別控除
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住民税所得割 × 20% 住民税の特別控除は、これまでは住民税所得割の2割が限度とされ上限は定められていませんでしたが、令和9年の寄付→令和10年の住民税より上限を193万円とされました。これが今回のテーマとしている193万円キャップです。 |
ではこれを踏まえて、住民税の特別控除が193万円に達する納税者の寄付額とはいくらになるかを計算してみることにします。これを計算する方程式を立てるのが困難なため、仮定の寄付額から逆算して、193万円キャップがかけられた後のふるさと納税限度額を推定してみましょう。
193万円キャップ制限をうける寄付額の推定
例1)まず当りをつけ、所得税等が最高税率で令和9年に437万円の寄付をした場合を検討します。
①(437万円 - 2,000円) × 45.945% = 2,006,877円
②(437万円 - 2,000円) × 10% = 436,800円
③ 437万円 - (①+②) = 1,926,323円 ≦ 193万円 …限度額内なので自己負担は最低額である2,000円です。
例2)次に、所得税率が最高税率で、令和9年に438万円の寄付をした場合を検討します。計算式は例1)と同様です。
① 2,01,4726円
② 437,800円
③ 1,930,728円 > 193万円 限度額を超過しており自己負担は2,000円+728円=2,728円です。
これより、所得税率が最高税率の場合は、ふるさと納税限度額がおよそ438万円付近であることが分かります。逆に所得税率が低いと、限度額はこれより少なくなります。いずれにしろ、所得割193万円キャップは、一部の大量に寄付をする人のみに制限がかかる制度と考えてよいでしょう。
結論を申し上げると、この「193万円キャップ」に引っかかるのは、目安として年収が数千万円から約1億円以上の超高所得者です。一般的な年収であれば、控除上限が193万円に達することはないため、これまで通りの計算でふるさと納税をすることができます。
まとめ
・ふるさと納税限度額のうち住民税の特別控除額が193万円に制限
・令和9年のふるさと納税→令和10年に納税する住民税から適用
令和8年の寄付は制限の適用外
・193万円キャップは、超高額所得者で年間およそ438万円を超える寄付をした人にのみ適用がある
・一般の納税者は従来どおりの仕組みでふるさと納税を利用可能
ふるさと納税は、本来「応援したい地方公共団体へ寄付をする制度」です。しかし同時に、寄付額が所得税・住民税から控除され、さらに返礼品を受け取れるという“寄付者側のメリット”も併せ持っています。この二面性が制度の魅力である一方で、「寄付者が得をしすぎているのではないか」という疑問や批判も以前から存在していました。
今回の税制改正は、こうした制度の公平性に対する指摘に一定の配慮を示したものです。ただし、現行制度はあくまで地方公共団体を支援する仕組みであり、同時に寄付者にも恩恵があることを前提として設計されています。であれば、制度の趣旨を理解したうえで、寄付者としても適切かつ効率的に制度を活用することが望ましいといえるでしょう。ふるさと納税のような基本的な税務相談も掛川総合会計事務所で承っています。
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