投資の利益が医療保険料に反映?健康保険法等の改正で変わる後期高齢者医療制度
2026/07/22
政府は2026年3月13日、金融所得を医療保険制度へ反映させる内容を含む「健康保険法等の一部を改正する法律案」を閣議決定しました。その後、衆議院・参議院で可決・成立し、2026年6月5日に公布されています。
今回は、この改正の中でも注目されている「後期高齢者医療制度における金融所得の勘案」について解説します。
目次
現行制度と改正の趣旨
現行制度では、特定口座(源泉徴収あり)で生じた配当所得や譲渡所得について、申告不要制度を選択し、源泉徴収のみで課税関係を終了させた場合、市町村や後期高齢者医療広域連合はその所得を把握することができません。そのため、これらの金融所得は後期高齢者医療制度における保険料や窓口負担割合の判定には反映されていませんでした。
一方、損益通算や譲渡損失の繰越控除などを受けるために確定申告を行った場合には、同じ特定口座(源泉徴収あり)の所得であっても行政側が把握できるため、後期高齢者医療保険料や窓口負担割合等の判定に影響する場合があります。
このように、同じ金融所得であっても、確定申告をするかどうかによって保険料等の取扱いが異なるという不公平が生じていたことから、今回の制度改正が行われました。
改正の概要
今後は、後期高齢者医療制度において、金融所得を保険料の算定や窓口負担割合等の判定に適切かつ公平に反映するため、金融機関等に対し、所得税法の規定により税務署長への提出が義務付けられている報告書等(法定調書)を、保険者(後期高齢者医療広域連合)へオンラインで提出することが義務付けられます。
これにより、これまで把握が困難であった上場株式の配当等に係る金融所得についても、保険料の算定や窓口負担割合等の判定に反映されることとなり、より公平な制度運営が図られることになります。
保険料や窓口負担へ与える影響
今回の制度改正により、これまで把握されなかった金融所得も保険料や窓口負担割合の判定対象となるため、人によっては医療保険料や窓口負担割合が変わる可能性があります。
また、現時点では後期高齢者医療制度のみが対象ですが、将来的に制度の見直しが議論される可能性もあるため、今後の制度改正の動向には注目しておく必要があります。
なお、金融所得については利益が生じた場合には保険料等の算定対象となる一方で、損失が生じた年には直接保険料を引き下げるような仕組みにはなっていません。譲渡損失は税法上、一定の要件のもとで最長3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺することはできますが、損失が発生した年の保険料が軽減されるわけではない点には注意が必要です。
① NISAを積極的に活用する
現行制度では、NISA口座内で生じた非課税の運用益は今回の対象となる金融所得には含まれません。税負担を軽減できるだけでなく、今回の制度改正による影響も受けないため、未利用の非課税枠がある場合は有効活用を検討するとよいでしょう。
② 家族全体で資産形成を考える
NISAの非課税保有限度額は1人あたり最大1,800万円です。夫婦であれば合計3,600万円、さらに成人した子どもなど家族も活用することで、家族全体として効率的な資産形成を行うことができます。ただし、家族へ資金を移転する場合には贈与税の問題が生じる可能性があります。また、将来の相続も見据えた資産管理が重要となるため、制度を利用する際は税務上の取扱いも十分確認しておきましょう。
まとめ
今回の改正は、「新たな税金」が創設されたわけではありません。しかし、これまで把握されなかった金融所得が後期高齢者医療制度における保険料や窓口負担割合へ反映される仕組みが整備される点で、大きな制度改正といえます。
現時点では対象は後期高齢者医療制度に限られますが、資産運用を行っている方にとっては今後の制度改正の方向性を理解しておくことも重要です。NISAなど現行制度を有効に活用しながら、中長期的な視点で資産形成を進めていきましょう。
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