経理担当者が会社の現金を紛失した場合の税務上の取扱い
2026/08/21
会社では、取引先への支払いや経費の精算などのため、一時的に多額の現金を持ち運ぶことがあります。しかし、万が一その現金を紛失してしまった場合、会社はその損失を法人税上どのように取り扱えばよいのでしょうか。
今回は、経理担当者が会社の現金を紛失したケースを例に、税務上の考え方と実務上の留意点について解説します。
目次
事例の概要
経理を担当する役員が、当面の支払資金として金融機関から現金を引き出しました。その帰宅途中に立ち寄った施設で、現金の入ったバッグを置き忘れてしまいました。すぐに現場へ戻って捜索したものの発見には至らず、警察へ遺失届を提出しました。その後も現金は見つからず、決算日を迎えています。
このような場合、会社は失った現金相当額を損失として計上できるのでしょうか。
法人税法上の考え方
法人税法では、事業活動に関連して生じた費用や損失は、一定の要件を満たすことで損金に算入することが認められています。現金の紛失は売上原価や販売費のような通常の費用ではありませんが、会社の資産が失われたことによる財産上の損失であるため、法人税法上の「損失」に該当すると考えられます。
そのため、会計上は一般的に「雑損失」として処理することになります。
損金算入できる時期
実務上、最も重要となるのは「いつ損失が確定したか」という点です。現金を紛失した事実だけでは直ちに損失が確定したとはいえません。
例えば、
・紛失後すぐに現場を捜索していること
・警察へ遺失届や被害届を提出していること
・一定期間が経過しても発見されていないこと
・客観的に回収が困難と認められること
などの事情を総合的に判断し、回収不能であることが明らかとなった事業年度において損失を計上することが適切と考えられます。
担当者に弁償を求めるべきか
税務上、損金として認められるかどうかと、担当者へ損害賠償を請求するかどうかは別問題です。
判断に当たっては、
・業務の遂行中に発生した事故か
・故意又は重大な過失があるか
・社内規程に違反していないか
などを総合的に検討する必要があります。
重大な過失が認められる場合には、会社が担当者に対して損害賠償を請求する余地があります。一方、通常の業務遂行中に発生した事故であれば、会社が損失を負担するという判断になることもあります。
税務調査に備えて保存しておきたい資料
現金の紛失は、税務調査において事実関係を確認される可能性があります。
そのため、次のような資料は必ず保存しておきましょう。
・預金口座からの出金記録
・現金の使用目的が分かる資料
・遺失届又は被害届の写し
・社内事故報告書
・捜索した経緯を記載した記録
・社内での報告・承認資料
これらの資料が整備されていれば、損失の発生や会社の対応について合理的に説明することができます。
まとめ
経理担当者が会社の現金を紛失した場合でも、回収のために十分な対応を行い、それでも回収不能であることが客観的に認められれば、法人税上は雑損失として損金算入が認められる可能性があります。一方、担当者への損害賠償請求の可否は、故意や重大な過失の有無など、個別の事情によって判断されます。
現金の紛失は、会計・税務だけでなく内部統制の観点からも重要な問題です。万一同様の事案が発生した場合には、事実関係を整理し、証拠書類を適切に保存したうえで、会計処理・税務処理を行うことが重要です。
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